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第8話 4月7日 授業中の、小さな秘密

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-12-04 20:00:34

朝はいつも通り、おばあちゃんの「おはよう」の声で目覚めた。

朝ごはんを済ませて、制服に着替えて、二人で手を繋いで学校へ。

指輪は念のため、ネックレスの紐に通して服の中に隠した。

まだ誰にも見せたくない。俺たちだけの宝物だから。

1時間目は国語。

教科書は『スイミー』。先生が朗読している間、俺はノートを取るふりをしながら、颯音の横顔を盗み見ていた。

颯音は真剣に教科書を見ている。

長い睫毛がぴくぴく動く。

時々、鉛筆をくるくる回しながら、小さく唇を噛む癖がある。

俺はその仕草が大好きで、見ているだけで胸が熱くなる。

先生「では、ページをめくって……」

颯音がページをめくる瞬間、俺の左手と颯音の右手が、机の下でそっと触れた。

指先が絡まる。

先生にバレないように、ゆっくりと小指を絡めて、ぎゅっと握る。

颯音の耳が少し赤くなった。

俺も同じだと思う。

先生が黒板に書くとき、颯音が小さくメモを滑らせてきた。

メモ『蓮、集中できない……君のせい』

俺は吹き出しそうになって、必死に堪えた。

すぐに返事を書いて返す。

蓮『俺も。颯音の横顔が可愛すぎるから』

颯音がメモを見て、顔を真っ赤にして俯いた。

肩が小刻みに震えている。笑ってるんだ。

2時間目は算数。

今日は分数のかけ算。

俺は得意だから、すぐに終わってしまった。

颯音は少し苦手で、眉を寄せて鉛筆をカチカチ鳴らしている。

俺は先生に気づかれないように、颯音のノートに指で小さく「分子×分子、分母×分母」と書いて見せた。

颯音がこくんと頷いて、すぐに解き始めた。

解き終わると、颯音が満面の笑みで俺を見た。

目が合った瞬間、二人で小さくガッツポーズ。

先生「瀬尾蓮くん、颯音くん、何か面白いことでも?」

蓮「いえ、なんでもないです!」

クラスがどっと笑った。

颯音は恥ずかしそうに顔を伏せたけど、唇の端が上がっている。

3時間目は体育。

今日はドッジボール。

俺たちは同じチーム。

颯音は運動は苦手だけど、今日はすごく頑張っていた。

ボールが颯音に向かってきたとき、俺は咄嗟に前に出てキャッチした。

蓮「大丈夫?」

颯音「……蓮、かっこいい」

小声で言われて、俺は舞い上がった。

休み時間、廊下で二人きりになった瞬間、颯音が俺の袖を引っ張った。

颯音「……蓮」

蓮「ん?」

颯音「さっき、ありがとう。守ってくれて」

そして、誰もいないことを確認して、颯音が俺の頬にちゅっとキスしてきた。

0.5秒くらいの、電撃みたいなキス。

颯音「授業中の分」

俺は真っ赤になって、慌てて周りを見回した。

蓮「バレたら死ぬって!」

颯音「誰も見てないよ」

颯音が悪戯っぽく笑う。

その笑顔が可愛すぎて、俺は思わず颯音の手をぎゅっと握った。

4時間目は社会。

日本の地図を覚える授業。

先生が「隣の人と都道府県名を言い合って覚えましょう」と言った。

颯音と俺は、もちろんペア。

颯音「北海道」

蓮「青森」

颯音「岩手……」

と言いながら、机の下で指が絡み合う。

都道府県を言いながら、小指で「大好き」と書いて伝える遊びを始めた。

颯音の指が俺の手のひらに「だ・い・す・き」と書いた。

俺も同じように「俺も」と返す。

颯音が顔を真っ赤にして俯いた。

先生が「颯音くん、どうした?」と聞いたら、

颯音「なんでも……ないです……」

クラスがまた笑った。

5時間目は理科。

今日は顕微鏡を使う授業。

二人一組で、葉っぱの細胞を見る。

先生「観察したら、スケッチしてください」

顕微鏡を覗きながら、颯音が小声で言った。

颯音「……蓮、これ見て。すごく綺麗」

俺が覗くと、本当に綺麗な細胞が並んでいた。

蓮「ほんとだ」

颯音「俺たちみたい」

蓮「……え?」

颯音「ぴったりくっついて、離れないで生きてる」

俺は胸が熱くなって、颯音の肩にそっと頭を預けた。

先生は気づかなかった。

6時間目は道徳。

テーマは「大切な人」。

先生「皆さんにとって、大切な人は誰ですか?」

俺と颯音は顔を見合わせて、小さく笑った。

先生「では、隣の人と、二人で話し合ってください」

颯音が真剣な顔で俺を見た。

颯音「俺にとって一番大切な人は……蓮」

蓮「俺も……颯音」

颯音「理由は?」

蓮「颯音がいなかったら、俺、今生きてないかもしれないから」

颯音の目が潤んだ。

颯音「俺も……蓮がいなかったら、もう笑えてなかった」

先生が「二人とも、とても真剣ですね」と笑った。

放課後、教室で二人きりになった。

颯音「……今日、一日中蓮のことしか考えてなかった」

蓮「俺も」

颯音が俺の首に腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。

颯音「学校でも、恋人だってバレないように頑張った」

蓮「うん。秘密の恋人」

颯音「でも……いつか、みんなに言いたいな」

蓮「……いつかね」

颯音「大人になったら?」

蓮「うん。大人になったら、堂々と手繋いで歩こう」

颯音「約束」

帰り道、桜並木の下で、颯音が立ち止まった。

颯音「……蓮」

蓮「ん?」

颯音「今日も、愛してる」

蓮「俺も、愛してる」

颯音が俺の唇に、そっとキスしてきた。

桜の花びらが二人に降り注ぐ。

授業中の、小さな秘密。

机の下の指文字。

顕微鏡越しの「俺たちみたい」。

全部が、俺たちの宝物になった。

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